広報では、ともすると会社視点の情報発信になりがちです。
しかし、本来の広報意義から考えると、企業の公共性をまず考えなければなりません。社会的視点が必要なのです。
自社の強みをアピールするばかりではなく、広い視野を持ち社会貢献をするためにも、広報の経営戦略について考えてみましょう。
経営戦略とともにある広報
明確な経営戦略がない広報活動では、社内の人間が、個別にあちこちに向かい動いてしまうことになります。
それは、羅針盤のない船団が、勝手気ままに航海に出ているようなもの。こちらの船は東へ行き、向こうの船は北へ向かっているようでは、いつまでたっても船団は目的地にたどり着けません。
その場しのぎではなく、中長期的な視点で会社全体の意識を同じ目的に向けるために、戦略的広報が必要です。
広報はすぐに効果が現れ、実証できるものではありません。
早くても半年から、1〜2年かかると思ってください。
企業が目指す方向に沿って実現させるためには、明確な広報戦略があってこそ。
- 企業理念の作成
- 経営ビジョンの作成、戦術を練る
- 具体的実現方法、ロードマップ
と順をたどって広報の経営戦略を練っていきましょう。
自社情報の洗い出しワーク
経営戦略作成のために、まず自社情報の洗い出しをしましょう。
- 創業(独立)は何年?
- 売上高は?(または、実績、登録者数、ユーザー数など、実績が数値で表せるものを記載)
- 会社設立の背景
①会社設立のきっかけ
②経営者の経歴
③会社を作るときに苦労したこと - そもそもなぜこのサービスをつくったのか
市場では先駆者であるか、後追いであるか
このサービスを作り運営する上で困った点はあるか。苦労話を書き出そう。 - サービスユーザーの特徴は(消費者・顧客)
- 社会課題
①このサービスは何の社会課題を解決しているのか
②どんな人の課題を解決しているのか - 競合他社はいるか。競合他社との差別化はどこか。(オンリーワンのポイントや自社ならではの強みを書こう)
- 会社の将来
①今後の展望は
②今後どういう社会になっているといいと思うか(会社として) - 一言で言うと、何をしている会社か
- 会社がメディアに出た時にどういう認知を消費者にしてほしいか。(ブランドメッセージ)
このワークからでた情報を元に、企業理念など、戦略を練っていきます。
企業理念を定める
「企業理念」とは、会社はどのような社会的役割を果たしているのか、どのように社会にあるべきかを表したものです。
企業理念、どのような思想や哲学で会社を運営しているのかを書き出しましょう。
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経営ビジョンを作成する
「経営ビジョン」は企業理念を実現するために描く企業の将来像です。
企業理念に沿って、将来の目指す姿を定め、従業員や顧客、株主、社会などに示すもの。
理念では、哲学的であり、論理的なものですが、ビジョンでは自社に関わる人の感情に響くものと言えるでしょう。人は、論理的なものよりも、ウキウキ、ワクワクなどの感情によって動きます。
たとえば、ソニーのビジョンはこのようなものです。
例)ソニー
『テクノロジー・コンテンツ・サービスへの飽くなき情熱で、ソニーだからできる新たな「感動」の開拓者になる。』
ソフトバンクグループ
- 300年間成長し続ける企業グループ
- 戦略的シナジーグループ
- 次の時代を担う後継者の育成
経営戦略を作成する
企業理念、経営ビジョンができたら、経営戦略を練っていきます。
経営戦略では、資源配分(人事・財務・渉外・研究開発・危機管理など)をし、具体的に実現する方法へと落とし込みます。
特に広報では、経営戦略を元にあるべき姿を描いたあと、その中からどの部分を内外につたえるのかを選択、全体の総意のもと、情報リーダーとしてPDCAを回しながら経営情報を統括、推進していきます。
広報戦略の好例、株式会社ローソンの場合
例えば、株式会社ローソンでは、2013年から『マチの健康ステーション』という中期事業戦略を掲げました。
少子高齢化や医療費の増大という社会的課題に対応したこのビジョンにより、健康を重視した食品の取り扱いを増やしたり、医薬品取り扱い店舗の拡大、薬剤師や栄養管理しによる健康相談の導入など、経営戦略に沿った事業を展開、広報活動を行ったところ、増益へとつながった象徴的な企業です。
このように、経営理念、ビジョンから経営戦略を打ち出すことによって、企業の向かう先が社内・社外にはっきりと見え、ステークスホルダーの理解と賛同を得ることもできるわけです。
まとめ
経営戦略のための、自社情報洗い出しワークから、企業理念、経営ビジョン、経営戦略の作成までをざっとまとめてみました。
広報担当者は、自社本位ではなく公共的視点を持つこと。
そして幅広いステークスホルダーとの良好な関係構築を常に意識しなければなりません。そして、いかにコミュニケーションを通して会社の理念や意思を理解してもらうか戦略を練り、実現していきましょう。