『戦略PR』という言葉を聞いたことがありますか?
「広報の基本」でPR(パブリック・リレーションズ)とは”組織や企業と、それを取り巻く社会(パブリック)との良い関係(リレーション)を作り出す考え方や行動のあり方”だということをお伝えしました。『戦略PR』とは、メディアや世論を巻き込むPR手法です。
今回は『戦略PR』と、お金をかけずに実践できるPR手法、『ストーリーテリング』についてご説明します。
戦略PRは空気作りから
戦略PRとは、商品を購入したくなる「空気づくり」をすることです。
商品そのものに焦点を当てて宣伝するのではなく、まずは話題づくりや業界のブームを誘導し、その商品を購入したくなるような世論をつくっていくことが戦略PRであるといえます。
戦略PRの始まり
戦略PRは2009年に出版された『戦略PR 空気をつくる。世論で売る。(本田 哲也著・アスキー・メディアワークス)』と『脱広告・超PRー広告を信じなくなった消費者を動かす「連鎖型」IMC(山田 まさる著・ダイヤモンド社)』の2冊から始まったといわれています。
戦略PRは従来マスコミに報道してもらうことが広報の主流だった時代において革新的なPRの手法であり、ブームを巻き起こしました。企業主導の宣伝ではなく、メディアによる報道や世間の話題ということで、客観性・信頼性を高め、消費者が自ら購入の意思を持つようにむかわせる、というのが戦略PRの手法です。
戦略PRの成功事例
戦略PRの成功事例として挙げられるものに、ハイボールがあります。
ウイスキーの販売量が急激に落ち込んでいたサントリーで、起死回生の案として仕掛けられたのがハイボールの戦略PRです。
サントリーの調査でウイスキーの売り上げの低迷には、若者がウイスキーを倦厭することが原因のひとつだとわかりました。
そこでサントリーは宣伝に走るのではく、まずはファンを増やすためにハイボールのおいしさを伝えていこうと考えたそうです。
ビールのように気軽に飲んでもらうためのジョッキの開発や、誰でもおいしくハイボールをつくれる割合の周知、黄金比のハイボールをつくれるハイボールタワーの提供やモデル店の設立などを行っていきました。
そして、徐々にハイボールの認知度(購入したい空気)が高まったところで女優の小雪さんで有名なテレビCMを打ち出しました。そこから売り上げが一気に加速したそうです。初めから宣伝色を出していくのではなく、空気づくり、話題づくりから始める。まさに戦略PRの成功事例といえるでしょう。
戦略PRにはお金がかかる
戦略PRの説明にハイボールの事例を出しましたが、これはサントリーほどの大企業だったためできたことともいえるかもしれません。そこまで予算を当てられない、という企業の方が多いでしょう。
お金がないと戦略PRはできないのか
中小企業やベンチャー企業の広報は、そもそもの予算が少ないことが多いです。
例えばSNSで話題づくりをするためにブロガーやインフルエンサーのイベントを行うことや、旗艦店にてプロモーションを行うことなど何をするにもお金が要ります。
では、お金がないと話題づくりや空気づくりができないのでしょうか。いいえ、実は少ない予算でもしっかり話題づくりができる方法があるのです。
お金をかけずに知恵を使う、『ストーリーテリング』という手法
少ない予算でもしっかり話題づくりができる手法、それが『ストーリーテリング』です。
例えば「カンブリア宮殿」や「プロフェッショナル 仕事の流儀」のようなドキュメンタリー番組で語られる商品やサービスを見ると、不思議とその商品やサービスを試してみたくなりますね。
番組内では商品の宣伝や値段の説明がされているわけではありません。では、なぜ私たちはその商品が欲しくなるのでしょうか。それは、商品の裏に『ストーリー』があるからなのです。商品の機能説明よりストーリーの方が人の記憶に残りやすいのです。
食品メーカーのシャトレーゼを例にあげてみましょう。シャトレーゼでは2018年に発売された「チョコバッキー」というアイスが大ヒット中です。商品の説明は”パリッと、パキッと、ゴリッと、ゴロっと。ひとつひとつアイスの表情が違う為、食べるたびに変化するチョコの食感が楽しめます”。
この食感と1本60円という価格が人気の秘密となっています。
ここまででは「食感がおもしろい」「価格が安い」という記憶が残ります。ここで『ストーリー』の登場です。
ストーリーの効果
商品の説明を聞いただけの時と、ストーリーを聞いたとき、どちらが商品を手に取りやすくなるでしょうか?
チョコバッキーをお土産に買い、家族や友人に話をしたくなりませんか?これが、ストーリーの効果です。
まとめ
商品のストーリーは消費者の共感や理解を深め、購入の動機付けになります。
ストーリーを知ることで消費者に商品や企業のファンになってもらうのです。
これはパブリック・リレーションズの考え方につながっています。自社製品の広報をする時は、製品性能だけではなくストーリーも一緒に考えてみるようにしましょう。