広報の悩みのひとつに、自社の『PRポイント』が見つからないということをよく聞かれます。
大企業でなければ毎月商品を発売しているわけではありませんし、B to B(企業から企業)で商品やサービスを提供しているため、PRをしにくいということもあります。
たしかに「商品」という形が無いとPRするポイントを迷うかもしれません。
ですが、PRができるものはなにも商品・サービスだけではありません。どの企業にも必ずあるPRポイント、それは『会社の顔』である人です。
『会社の顔』をPRポイントに

どんな企業にも必ず存在するPRポイントは人、つまり社員や経営者です。
消費者は商品がどのような環境で、どのような人物が作っているのかという背景を知りたがります。
商品情報の背景として使用した社員のストーリーが、思わぬヒットを生み出すこともあります。
そのため、社員ひとりひとりが『会社の顔』でありPRポイントとなりうるのです。
経営者の話を聞こう

企業のトップである経営者は、まさに『会社の顔』。
経営者は誰しも人知れない苦労や喜び、人生経験に基づいた経営哲学などを抱えています。
経歴や趣味、普段の生活習慣も詳しく聞いてみましょう。
失敗談もおもしろいですね。
失敗談から成功につなげた話もあるかもしれません。
経営者と話す機会があれば、経営の話だけではなくプライベートについてもどんどん質問してみましょう。
安心感を与え、好意をもってもらえる『顔出しの効果』とは
先ほどお伝えした通り、社員・経営者のストーリーはPRに大変有効です。
さらに、実際の社員・経営者の顔写真を出すことができれば広報活動の幅が広がります。
商品のパッケージに、SNS・ブログ・WEBサイトに、採用情報に、社内広報に、ニュースリリースのアイキャッチにと多様な使い方ができます。
顔出しのメリット
最近のスーパーの野菜売り場や道の駅では「私が生産者です」と名前と写真をつけた野菜を見ることがふえてきました。野菜の品種・特徴などの他に、誰がどのような環境でその野菜を作っているのかを一緒に開示することで、顔が見えるという安心感を感じるからです。
どうして消費者は顔が見えることに安心感を覚えるのでしょうか?

実は消費者は無意識に「顔を出しているのだから悪いことはしないだろう」「顔まで出しているのだから、誠実なのだろう」と考えます。これが安心感につながるのです。
また、ザイオンス効果というものもあります。
ザイオンス効果は、何度も顔を合わせた相手・物に対して好感度が上がるという効果です。まったく興味がなかったのに、テレビCMで毎日見ているうちに気になってくる、もしくは通勤途中の看板で毎日見る機会があると次第に気になってくるというのは、このザイオンス効果なのです。
町の看板を眺めてみましょう。ラーメン屋店主が、歯科医が、セラピストが、塗装職人が、大きな看板に決めポーズでおさまっています。これらはザイオンス効果を期待して作られています。
つまり顔出しには
・消費者に安心感・信頼感を与える
・何度も写真を見ることで、好感度が上がる
というメリットがあります。
社長が「てんちょ」に
クラフトビールを製造しているヤッホーブルーイングというブルワリー(ビール醸造所)があります。WEBサイトではスタッフ紹介として、社員が顔写真とそれぞれのあだ名を載せ、自らのストーリーを語っています。
なんと代表取締役社長である井出 直行氏自らも「てんちょ」と名乗りスタッフ紹介に登場しています。
写真があるために、どのような社員がこちらのビールを作っているのか、また、どのような社風なのかが直感的にわかりますね。これが消費者に安心感・信頼感を与えるのです。
顔出しのデメリット

しかし、実際に社員の写真を出すとなるとデメリットもあることを念頭に置いておきましょう。
・不祥事や不具合といった会社にとってのネガティブなニュースが出た場合、「企業の評価 = 顔出し社員」のイメージになってしまう可能性がある
・デジタルタトゥー(一度インターネットで拡散された画像は完全に削除できずに残ってしまう)の可能性がある
顔出しには社員の協力が不可欠です。顔を出すことのメリット・デメリットを十分に説明し、理解してもらってから使用するようにしましょう。場合によっては本名を出さず仮名やキャラクターネームをつけるなどの配慮が必要になってきます。
まとめ
社員の協力が得られて顔を出してくれるということは、広報にとって非常にありがたいことです。メリット・デメリットの説明をしっかりとして協力を仰ぎましょう。また、普段から社員・経営者の情報に意識を向けておくことが大切です。