今、広報のパラダイムシフトが起きています。
”広報”と聞くと、「お金をかけずにメディアで商品を宣伝できる」「コスパのいい、むこうから取材に来てくれる広告手段」だと考えている方も多いのではないでしょうか?
もちろん、それも間違いではなく今でも大きな広報の役割の一つですが、それは広報の大きな役割の中のほんの一部、通過点であって、本質はそれだけにとどまりません。
広報は、旧来の大企業のみがもつ部署から、今後は小さな会社こそもつべき時代へと変わってきています。
広報のパラダイムシフトとは、一体どのようなことなのか、これまでの歴史から、広報の新しい『経営戦略的広報』とはなにかをお伝えします。
かつての「広報」の考え方、「教科書的広報」とは?
まず、かつての「広報」のあり方について歴史を辿りたいと思います。
広報とはどういう意味なのかご存知でしょうか?
「広報PR」とは、
「企業や団体が、社会や消費者とより良い関係を構築するため活動全般」
のことを指します。
広報を英語で表記しますと、パブリックリレーションズ(Public Relations)となり、PRはこの略称です。
ただ、教科書的なPRの大義は大きすぎるため、売り上げに直結しない広報は、上場している大きな企業だけとされてきました。ですから広報という部署は大企業のものであり中小企業には関係のないもの、そういう認識が広がっていました。
教科書的PRからマーケティングPRへ
教科書的PRから大きな転機が訪れたのが、1990年代。「マーケティングPR」の時代へと変わります。
それまでの広報部は直接の売り上げがないために、宣伝部と比べると極端に予算が少ない部署でした。
そんな中、とある新興PR会社が、広報部とは桁違いに大きな予算をもっている広告宣伝部に目をつけます。もっと直接的に実際の売り上げや利益に繋げることを目指して広報を行うことにより、広告宣伝部から仕事をもらうビジネスモデルへとチェンジしていきました。マーケティングや商品プロモーションの一環として戦略的に行う、こうしたPRのことを『マーケティングPR』といいます。
広報部の予算は多いところでさえ数千万円程度だったのが、上場企業の広告宣伝費やマーケティングの予算は数億円から数十億円です。
このお金が広報へと流れ込むことで、これまでとはまったく規模の違う巨大なビジネスモデルとなりました。
広報の存在は『マーケティングPR』の出現により、大きなものに変化していきました。
それまで自社で多額の広告費を支払い宣伝をすることに比べると、向こうから取材に来てくれるわけですから、原則費用はかかりませんのでコスパの良さは比になりません。
さらに、経費だけではなく、メディアに報道や記事の形で出ることで消費者からの信頼が増し、売り上げが上がる効果が絶大だということがわかりました。
テレビで取材を受けたと流れたと同時に、小さな商店に電話が鳴り止まなくなったり、商品が何ヶ月待ちになってしまったり、ということもよくある話です。
おそらくこの「マーケティングPR」が、今みなさんが考えている広報の形に近いのではないでしょうか。
しかし、良いことばかりではありません。
マーケティングPRから生まれたステマ
ここ数年、「マーケティングPR」からスマホなどの普及によって流行してしまったのが、『ステルスマーケティング』いわゆる『ステマ』です。
ステマとは、有名人などに商品を使用してもらい、SNSやブログなどで情報を拡散してもらうマーケティング手法ですが、一方有名人を使ったやり口が社会問題にもなっています。
広報では、取材するかどうかの決定権はメディア側にあります。
もちろん取材しても報道してもらえるかどうかもこちらでコントロールすることはできない、というのが前提条件です。
しかしPR会社が多額のおカネをもらったために起こったのが、『報道をお金で買う』こと。お金をもらっている以上、実績をあげざるを得なくなったPR会社は、依頼元へ取材をしてもらうようにマスコミと裏取引をするようになります。
信用をお金で解決する方向に走ったことから、消費者の反感を買い、かえって社会的信用を失ってしまいました。
『マーケティングPR』は、企業とメディア、マーケットの構図まで変え、ステマを生み出すこととなり、ふたたび広報は変革の時代を迎えます。
広報のパラダイムシフト
広報はかつての「教科書的PR」「マーケティングPR」の時代を経て、今新しいパラダイムシフトが起こりつつあります。
広報の現場に携わって肌身で感じるのは、大企業ばかりでなく、中小企業、主にIT企業で広報の重要性を再認識して取り入れる企業が増えたことです。都内でも実際に広報職の求人が増えています。
広報に力を入れ実績をあげている企業としては、LINEやメルカリなどが有名です。どちらも創る仕掛ける広報の活動により、7年かけ現在のように注目を浴びるようになりました。
まとめ
これまでの信用を失うまで歪んでいった「マーケティングPR」は、新たに『経営戦略的広報』へと変化しつつあります。
これはいい会社への信頼を軸とした、会社と社会と消費者をともに育てていく広報です。
そして『経営戦略的広報』では、大企業だけでなく中小企業やより小さな会社、ベンチャー企業、ビジネススタートアップにも大きく多様なメリットを享受することが可能になります。
今後は新たなパラダイムシフトに対応した会社が、変革していくビジネスに生き残っていくでしょう。